○平地と複雑地形の住居配置ルール
4kmの円(フラワー オブ ライフ)を配置できればそうするが、山間部では地形が複雑になっている。その場合でもまず中心に多目的施設を建設し、可能な限り円形に住居を配置していく。もし1戸しか建てれないような細い場所であれば、一直線に住居が並ぶこともある。その場合も、住居間は最低4m開ける。
◯まず自治体の中心となる場所に多目的施設を建てる。(右図)
◯地形に合わせて、直径4km、1333m、444m、148m、49m(住居6件)、16m(住居1件)の円の順で配置して隙間を埋めていく。(右図)
◯川沿いに住居は建てず、過去の洪水データを調べ、川岸から数十m離して建設する。(左図は川と住居が近い恐れがある。)
◯山崩れ・斜面崩壊を考慮し、予測される土砂の到達位置以上に離して建設する。(左図は斜面と住居の距離が近すぎる可能性がある)
◯集中豪雨が2日続くと、山の斜面に挟(はさ)まれたせまい場所は濁流が押し寄せることを前提とする。(左図の山の斜面に川があれば危険度が高い)
○斜面崩壊・山崩れについて
日本のプラウトヴィレッジは山間部に位置することが多くなることから、山崩れを考慮した住居と道路の建設位置を考えなければならない。山崩れ、がけ崩れ、土砂崩れは斜面崩壊ともいう。これらは大雨や地震によって発生しやすくなる。よって斜面崩壊の影響を受けやすい麓(ふもと)には畑を作り、道路と住居は斜面から離して作る。
大雨による斜面崩壊が発生しやすい箇所として、次のようなところが挙げられる。まず斜面の傾斜が30度以上の所、斜面の途中で傾斜が突然急になるところがある高さ5m以上の斜面、谷型(凹型)の斜面、上方に広い緩傾斜地(かんけいしゃち)がある斜面などである。最後の2つは多量の水が集まりやすい地形条件。
いつどこで崩れるかの予測は困難だが、崩れた場合、がけ際から土砂の先端までの距離は、がけの高さと同じ距離の範囲内にほぼ収まっている。ただし地面に傾斜があるとより遠くまで達する。土砂の横への広がりはあまりない。
○農地
プラウトヴィレッジ内では自然農法で食物の栽培を行う。果物など頻繁に収穫する作物は住居近くに、米など年に1~2回の収穫の作物は、少し離れた広い土地で作り、場合によってはプラウトヴィレッジの外側でも作る。その場合は、近隣自治体と話し合って利用範囲を決める。米など育つのに時間がかかり主食になるものは、斜面崩壊の影響がない場所で育てるのが望ましい。家庭では垂直に作物を積む水耕栽培も行って、野菜などを計画的に安定的に育てる。
○電力設備
プラウトヴィレッジでは電線、通信ケーブル、アクセスポイント、上水道などを、道路の横に埋設する。各家庭のインターネットや電話はWiFiやアクセスポイントから接続する。自治体の至る所で作られる自然エネルギーは、道路横の電線を伝って各住居や自治体の管理室(ICT・電力・水道)へ集められる。そして自治体と自治体も同じく結ばれ、世界中の電力設備が結ばれる。電力が足りていない地域へは、足りている地域の余剰電力が供給される。こうして自治体そのものが大きな発電所となる。
○水道水
プラウトヴィレッジでは河川へ汚水の流入がなくなり、水質が改善される。河川の取水塔から取水された水は運営館の管理室(ICT・電力・水道)で水質管理され、家庭へ送られる。下水道や下水処理場は必要なく、排水は農地に還元される。そして水道管は鉛などが混じらず、錆びないものを使用する。
綺麗な水を取水するため、地元の水源環境は厳しく管理し、出来る限り水が沸き出すポイントから取水する。それによりミネラルが豊富な水をそのまま飲めるようになる。
河川が近くにない自治体には、最も近い自治体からパイプを伝って水を供給することが第一となり、それが不可能であれば自治体ごと水が供給される場所へ移転する。
島などで水源が確保できない場合は、水源がある地域から海底水道でつなげて供給する。ただ海底水道が建設できないような場所にある島の場合は、地下ダムを検討する。地下ダムとは地中に水を通さない壁をつくって地下水の流れをせきとめ、地下水をためる施設であり、すでに日本を含め様々な国で使用されている。
○公共工事
公共工事は製造部が計画と設計を行うが、それがまとまれば1長の承認を得る。次に製造部は工事が必要な場所の長に伝える。例えば広い範囲の工事であれば3長かもしれない。3長は製造部と話し合いながら、そこエリアに住む住民にどのように作業を振り分けるか決め実施する。もし工事エリアは狭くても大人数が必要な時は周辺の町会にも伝え、手伝ってもらう。
1日の労働時間は1〜4時間などできるだけ短くして、交代制で回していく方が良い。またある住民はよく参加して、ある住民の参加率が低いと、次第に積極的な参加者の中で不満がたまって揉め事に発展する可能性がある。そのため参加者の労働時間は記録しておき、できるだけ公平な労働時間になるよう配慮する。
プラウトヴィレッジでは物質的に過不足なく満たされることにより貧困がなくなり、それによって犯罪も少なくなるので家の鍵をかける必要性は減ってくるが、初期においての鍵の設置は居住者の判断に任せる。
そして引越しの際は家財道具を置いていくこともでき、次の居住者はそれを利用する。こうして自治体の承諾を得れば、誰でも好きな所に好きな人と住むことができる。それは子供であっても。
住民が住居の改築や新しく建てたい場合は、製造部に申し出る。製造部が円形の配置を基本として、地域のどこに建てるのかを決定していく。住居の建設の際は建物の領域を示すような柵や塀は作らず、開放的な状態にする。
街の作りはすべて、車椅子の人物が一人でも移動できることを前提とした設計とする。誰かの助けを必要とするような段差や隙間はできるだけ作らない。階段も長いスロープにするか、エレベーターをつけるなど配慮する。
自治体の道、山道、建物の位置は、人間よりも自然の都合を優先する必要があるので、製造部が中心となってそれらの位置設計を進め、大樹は伐らずに残す。地上の道路には信号、道路標識、柵、塀、ガードレールはできるだけ作らず、自然を優先する。ただ隣の自治体までは、災害時の救助などに使用する大型車が通れるくらいの幅の道路は確保しておく。
道路作りの基本として、交差点などの死角を作らないこと。よって四つ角に建物があるような自治体づくりは始めから避けていく。また歩行者用、自転車用、車用の道路もできるだけ分ける。
そして車が通らない野原などには道を作らず、人が自由にコースを決めて歩けるようにし、社会にはゴミがなくなるので、どこでも裸足で歩けるようにする。夜になれば住居と道路の電灯が光ることになるので、電灯はすべて照明芸術として設計し、夜の景観向上に努める。ただ景観向上に影響力を持たない場所の電灯は、人感センサーなどを使用して通行がある場合にだけ点灯するようにし、それ以外の時間は闇にして星が見えるようにする。
河川もコンクリートの堤防の建設はできるだけ避け、自然のままの景観を維持する。よって豪雨によって川が氾濫する恐れのある場所には、建物を作らないことが基本となる。こういった共通ルールを守ることで地上には必要最低限の建造物と道路だけとなり、後は自然と動物で溢れかえることになる。
○船舶
港を作る場合、港は自然によってすでに条件が整えられている天然の良港に優先して作る。
○推薦選挙
貨幣社会では金銭的利益や新しいものを生み出そうとする意欲の高いリーダーの方が、事業や科学を発展させるのに適していることがある。しかしプラウトヴィレッジのリーダーにその意欲は一番必要なものではなく、貨幣社会とは異なり、社会を無理に発展させる必要はない。住民はプラウトヴィレッジの生活でほとんどが完結し、忙しく働かなくても生活は成り立つので、社会の発展はすべての人が恩恵を受けられ、自然環境を破壊しない場合のみとなる。その選択ができる人物をリーダーに選ぶ必要があり、それにより平和で安定した社会を築くことが出来る。こういった人物が自治体や州の代表者になる必要があるが、貨幣社会の選挙制度では人格者が表に出てくることは少ない。
知名度、資金力、派閥などが重要になる貨幣社会の選挙制度には、大きな問題点がある。それは有権者は限られた情報の中から誰かを選ばなければならない点で、多くの人はテレビや動画、新聞、街頭演説などの少ない情報からでしかその人物を判断することができない。仮に立候補者の活動的な姿や笑顔ばかりがテレビに映れば有権者への印象はよくなるが、それは政治活動中の姿でしかない。つまり有権者は投票する人物が本当はどういった性格なのかが理解できないまま、投票することになっている。
こういったことを解決する選出方法として、また人格者を選出するため、自治体内で住民による推薦選挙を行う。そして段階を経て選ばれた自治体の1長(首長)は、県内の1長が集まる県議会に参加する。県議会でも同じく推薦選挙で県長を選出し、その人物は国の県長達が集まる国議会(こくぎかい)に参加する。国議会に集まる県長の中からは、六大州の州議会へ参加する国長を推薦で選ぶ。最後に六大州の中から世界連邦の大統領などを決定する。
自治体から世界連邦まで、推薦選挙は次のルールで行う。
・必ず誠実な人を選ぶこと。
・第一に誠実な人柄があって、その中から実力があり結果が出せる人を選ぶこと。
・推薦する人物はN群(女性、レズビアン、トランスジェンダー、Xジェンダー)とS群(男性、ゲイ、トランスジェンダー、Xジェンダー)から交互に選ぶ。
・自分の性別に関して男女中性・両性・無性・不定性とするクエスチョニングやノンバイナリーの人物、第3の性だと自認するXジェンダーの人物、身体の性と心の性が一致していないトランスジェンダーの人物は、N群とS群のどちらに登録するかを自分で決める。その場合、自治体の男女の人数比率からバランスをとってN群S群のどちらに登録するなど、理由は自由。
・長と副長はN群とS群の組み合わせにし、交互に担当する。
・長が解任や引退になった場合は、同組織の副長が長となる。その後に一つ上位の組織の長か副長が下位の組織へ行く。その上位の組織の欠員も同じように埋めていく。この時もN群とS群の人物が交互になるように選出する。
・各組織の最終決定権は長が持つ。長が不在の時は副長が持つ。
・長、副長が怪我や妊娠などで長期的に離脱する場合は、一時的に代理を立てる。復帰後、同じポジションが空いたら、そこへ復帰できる。
・世界連邦、州議会、国議会、県議会、町会へは長と副長が一緒に参加することを基本とする。
・総務、医食、製造の長と副長は専門知識がいるので、自治体で評価の高い誠実さと能力を兼ねそろえた人物を探して依頼する。そのため1町会で話し合い、1長が依頼する権限を持つ。
・住民は1人推薦する権利を持ち、各長は担当の組織と5町会の2つで推薦する権利を持つ。
・推薦する権利は住民全員にあるが、1年以上そこに住んでいることを条件とする。
・自治体は特別な理由がない限り、必ず10歳以上の住民全員の推薦者を聞く。
自治体での推薦選挙の流れは次のようになる。プラウトヴィレッジは6戸の住居から5つの円の階層ができるので、5町会から1町会までの町会(ちょうかい)を組織し、各町会ごとに代表者である長(ちょう)と副長を立てる。どの町会の話し合いも、誰もが見学できるように事前に告知する。
⑤直径49mの円 5町会
(5長はヴィレッジ全体で2352人ほど。住居6戸の代表者。5長、副5長、住居6戸で構成。)
④直径148mの円 4町会
(4長はヴィレッジ全体で336人ほど。4長、副4長、5長7人、副5長7人で構成。)
③直径444mの円 3町会
(3長はヴィレッジ全体で48人ほど。3長、副3長、4長7人、副4長7人で構成。)
②直径1333mの円 2町会
(2長はヴィレッジ全体で7人ほど。2長、副2長、3長7人、副3長7人で構成。)
①直径4kmの円 1町会
(1長はヴィレッジ全体で1人。1長、副1長、2長7人、副2長7人で構成。)
1町会の2長と副2長の計14人の中の2人が、プラウトヴィレッジの1長と副1長になる。次の1長は副1長がなるので自動的に決まるが、副1長は1町会の2長と副2長たちによる投票で決まり、他の階層の代表者も同様の投票で選出する。上位組織の長か副長が、下位組織へ参加する。そして1長や副1長が輩出された2町会では新たに長か副2長を選び、1町会へ参加する。
推薦選挙は5町会から始まり、6つの住居がある円の住人から一人推薦し合う。下位組織の長が出た上位組織は、その都度、新しい長を立てる。それが世界連邦の大統領まで続いており、世界連邦までN群とS群から交互に選出する。
N群とS群から長を交互に出す理由は、これまでの人間の歴史では男性優位が続いてきたので、この仕組みがなければ、男性が推薦される割合が高くなる可能性がある。ただ群を細かく分けると誠実な人が推薦される確率が低くなり、仕組みの複雑性も増す。よってできるだけシンプルな仕組みにする。
そして一年に一回、推薦選挙の日を設け、長と副長は再選すればそのまま役目を維持する。もし再選されなければ残っている組織内の人から長を選出する。その後、解任された長の出身の一つ上の町会から新しい長を1人下位の町会へ送り、その上位の町会は新たな長を選挙で決める。
この手順で年に1回の投票の際に新しい長が必要な時は、1町会から優先的に長を埋めていく。こうすることで新しい長や副長が、1つ飛ばしで下位の町会に参加することを防ぐ。またこの方法でいくと一度も長は経験せず、副長の立場から自動的に繰り下がって下位の組織に参加することが連続する人物も出てくる可能性がある。ただそれでも副長になるにはまず同じ階層の町会で推薦が必要であり、また1年に1回の推薦選挙があるので、能力的に明らかに不適任の人物、もしくは強欲な人物であれば1年で解任される。
これは住民が推薦選挙や長に対して無頓着になるのを防ぐと同時に、長が不適任だった場合に交代が容易にできるようにするため。どの長も再選されなかった場合は、一度役職を失い、再び推薦されれば5町会から参加する。こうして世代交代の新陳代謝を良くする。
住民はもし近隣で問題が起これば、5町会の5長や副5長のもとに相談へ行く。そして必要であれば5長は近隣住民を集めて対話による解決を図る。それでも解決しないときは一つ下の階層の4長のもとへいき、より大きな問題として対話によって解決する。こうして問題が起こった時は対話により解決していき、各長は小さな組織で経験を積んで1長として成長していく。この場合、答えのない問題に直面した時に、その長と副長の本当の力量が見えてくる。
推薦権は10歳からで、特別な理由がない限り自治体は必ず全員の推薦者を聞く。10歳は男女ともに第二次成長期が始まる頃であり、心と体が子供から大人へと目に見えて変わり始める。そして自分の意思もはっきりと持ち始める。また子供は生まれてから親への依存する期間と、自立していく期間があるが、その節目を覚えやすい10歳に設定している。
推薦権は住民全員にあるが、1年以上そこに住んでいることを条件とする。理由は、引っ越してきたばかりで5町会の住民の多くと会っていないのに、何もわからず推薦するのを避けるため。
○県、国、六大州、世界連邦の推薦選挙
自治体の1長と副1長が集まるのが県議会。県議会の中でも県長と副県長を、「誠実さ」と「結果が出せる実力」を判断基準に推薦する。県長と副県長がでた自治体は、新しく1長や副1長を選出する。また総務、医食、製造の3つの運営組織の長と副長は県議会で話し合い、県長が依頼する権利を持つ。
2000年の日本には都道府県が47個あったので、47人ずつ県長と副県長がいることになる。その計94人は数年から数十年単位で長を担うと考えられる。この94人の中から国議会の推薦選挙で日本の国長(こくちょう)と副国長(ふくこくちょう)を選び、世界連邦へ参加する。国長と副国長がでた県議会も、新しく県長や副県長を選出する。
次に六大州と世界連邦の推薦選挙について。2000年の段階で世界には約200の国が存在した。つまり200人ずつ国長と副国長が存在する。大陸によって国の数は異なり、その中で推薦選挙を行うと、推薦者は自分に文化が近い国長を推薦する可能性があり、国数の多い大陸から世界連邦の大統領や運営組織の長が生まれやすくなる。また別の側面として、この時点で国長と副国長は数百万~数千万人の中から選ばれた誠実な人格者で実力もあるという段階。よってすべての国長と副国長は世界連邦へ参加する。
まず国長は自分の国がある六大州の中で推薦選挙を行い、州長と副州長を決定し、その2人が世界連邦の運営組織に参加する。六大州とは、①オセアニア州、②アジア州、③ヨーロッパ州、④アフリカ州、⑤北アメリカ州、⑥南アメリカ州のこと。南極には永住している人間がいないため除外とする。
つまり六大州(ろくだいしゅう)から2名ずつ計12人の州長や副州長が、世界連邦の運営組織へ参加する。その後、世界連邦の運営組織の中でも推薦選挙を行い、大統領と副大統領を決定する。大統領と副大統領、六大州の州長などが出た国などは、その都度新たに国長を選出する。ここでもN群とS群を交互に選出する。
現時点での世界連邦の運営組織は総務、医食、製造という3つ。この組織数がどこまで増えるかは未定だが、仮にこの形で世界連邦が開始した場合、総務、医食、製造の長と副長も自治体や県議会と同じく、誠実で実力がある人物は誰かを世界連邦で話し合って決め、最終的に大統領が依頼する権利を持つ。また必要であれば世界連邦の運営組織のサポートに、他の国長と副国長も参加する。
例として、もしオセアニア州のN群の人物が世界連邦の大統領を担当していて亡くなった場合、その時のS群からの副大統領が次の大統領となる。そして世界連邦の州長や副州長の中から、N群からの副大統領を新たに推薦選挙で選出する。その副大統領が仮に北アメリカ州出身の州長なら、北アメリカ州で新たな推薦選挙が行われ、国議会に参加する人物が決められる。こうした繰り下げ方式とN群S群の交代制で、年々少しずつ世界連邦を運営する州長と副州長の顔ぶれが変わっていく。
こうして5町会から世界連邦まで、運営と推薦選挙の仕組みは全て同じとなる。現時点で大統領になる人物は、5町会、4町会、3町会、2町会、1町会、県議会、国議会、州議会、世界連邦の9段階の推薦選挙を経ることになる。
○第一に誠実、その次に実力のある人物を推薦する
推薦選挙で選出する必要があるのは人格者。そのため「誠実な人物」を基準に選ぶ。誠実な人は次のような特徴がある。
自分を管理する能力が高く、自制心があり、真面目、ユーモアもわかる、自分で立てた目標に地道に取り組める、仕事を最後までやり遂げる、発言と行動が一致している、よって周囲の人に信頼されている、劣等感が少ない、感情の浮き沈みが少ない、いつでも機嫌よく振る舞う、落ち着いている、感じの良い印象、爽やか、あか抜けている印象、周囲に流されない、男女や身体的特徴で差別せず目上にも目下にも同じ態度で接する、媚びた感じがない、誰とでも会話に慣れた印象、明るい印象、チームプレーもできる、周囲に気を配れる、周囲の失敗も手助けする、自分優先の我欲ではなく全体の善を考えて行動できる、礼節を重んじる、賄賂(わいろ)などを受け取らず、配ることもない、など。
プラウトヴィレッジでは、礼儀や節度を重んじた人々を増やしていかなければならない。それによって自治体の良い人間関係が維持される。礼節の重要性はわかっていても、人間はなかなか行動にまで結びつかない。誠実な人物を選ぶということは、各町会の長と副長に礼節を重んじたリーダーを選ぶということでもある。組織の長の影響力は大きく、誠実な長がお手本となると、長に接する人々にも良い行動の連鎖が生まれ、自然と住民への人間性のお手本になっている。反対に人を見下す言動などの人物を長に選ぶと、その態度に接した住民も他者に同じような態度をとる傾向にあり、雰囲気の悪い組織ができる。この傾向は貨幣社会の会社でも見られる。誠実なリーダーの周りには誠実な人たちが集まり、不誠実なリーダーの周りには不誠実な人たちが集まる。
職場でも家庭でも同じ人と長く接していると、あの人はこんな性格という評価はみんな大体似てくる。世間体の姿ではなく裏の言動を見ても、あの人は誠実だと言える人物を推薦する。
もし自分に対して感じの良い接し方をしてくれる人がいたとしても、その人が周囲の目下や立場的に弱い人などにどのように接しているかを注意深く観察する必要がある。なぜなら何かの利益があるからあなたに対しては丁寧に接し、笑顔を見せ、お世辞を言っているだけかもしれない。不誠実な人は傾向として、例えばタクシーの運転手やレストランのウェイターなど、お客に逆らえない立場の人に横柄な態度をとることが見られる。
もし誰かを見て「あの人は嫌な性格ではないが誠実かどうかはわからない」と悩む人がいた場合も、誠実と言えるほどではない。誠実と不誠実の間には、相手の態度によって自分の態度を変えるという人もいる。良い態度で接してくれれば良い態度で接し返し、逆も同じというように。誠実な人は嫌なことをされても、自分の道徳心に従って行動でき、仕返しをしない。
誰かと問題が起きた時、誠実な人物は相手に勝とうとするのではなく、話し相手の立場にも寄り添い、対話を通じて理解を深め、できるなら仲間となって行動しようとする。つまり敵を作らず、友好的に解決しようとする。だから平和な関係が築け、平和な社会が築ける。つまり何があっても心の中が平和な人が、平和な状況を作り出す。
反対に貨幣社会では、政治でも企業でも生き残るための獲得が根底にあり、獲得欲の強い男性がリーダーのポジションを占める割合が高い。ただ、相手を負かそうとする人は恨みや妬みが増え、敵も増える。そうすると平和な社会は築けない。プラウトヴィレッジでは、内面に争いがない平和なリーダーが必要になる。男は腕力が強く、攻撃力が高いからいざという時頼りになるという考えでリーダーに推薦すると、その攻撃は自分が住む場所に返ってくるかもしれず、平和な社会は築けない。
こうして自治体の推薦選挙では、「誠実さ」をまず第一優先で長を選ぶ。平和で安定した社会は人間の内面から生み出される。それは内面の静かな人物のみが可能。欲に振り回されている人物のもとでは、不平等な判断、不正、派閥争い、いじめがおこる。
ただ、誠実だがリーダーとして能力や実力がない人の場合、自我が強く攻撃的な人物からはただ優しいだけの人というように下に見られることがある。よって誠実な人物が複数いた場合は、その人物がすでに何かを成し遂げてきていたり、実力や成功体験があるかを見る。例えばすでに組織のリーダーとして何かの結果を出していたり、個人でプロレベルの技や知識を身につけていたりなど。成功体験がある人物はすでに一定の経験値があるため、物事を進めるときに成功の道筋をイメージしやすく、組織を成功に導きやすい。つまり誠実さと実力の両方があると、万人からの理解を得やすくなる。
もし成功体験があり、実力もあって仕事ができるが誠実さを感じない人がいた場合、後々良いリーダーになるかもと推測してその人を推薦してはならない。理由として誠実さのないリーダーは、仕事ができない人の気持ちに共感できず、その人を下に見て、一方的に攻撃し、組織の雰囲気を悪くする根元になっていることがある。人格面の向上には時間がかかり、一生の間で急激に良くなることはほとんどない。また自分の利益を優先した選択をするので、全体の善を考えることはない。まず誠実さがあるということを大前提に、次に能力を見るという順序でなければ、平和な組織、良い組織にならない。
貨幣社会ではこういった例が多々見られる。あのリーダーは性格は良くないが、仕事で結果を出しているから周囲の人が何も言えない、というようなこと。こういった組織を作ってしまうと、そこに属する人たちも苦しむことになる。
もし推薦候補の中に、誠実だが実力がなくて誰からも話を聞いてもらえないタイプがいた場合や、実力はかなりあるが誠実な人ではないという人がグループにいた時は、これもまず性格はできるだけ良い人たちの中で、能力もそこそこあるという人を優先して推薦する。間違っても自己中心的な言動の実力者をリーダーに推薦してはならず、短期的には結果はでることもあるが、長期で続く良い雰囲気の組織にはならない。
もし誠実で実力がある人物が複数いた場合は、その中から挫折や修羅場をくぐり抜けてきた経験のある人物を選ぶ。修羅場は、失敗すると死や崩壊につながる綱渡り状態で、それを乗り越えると人としての器が大きくなり、余裕が生まれる。それは落ち着き、忍耐力、判断力、優しさとして現れる。こういった人物は次の修羅場に直面しても諦めずに耐え忍び、粘り強く組織を導く。修羅場は最悪の出来事ではなく、リーダーとして大きく成長できる絶好の機会であり、その機会がやってくるのは運の良さでもある。
これらの経験を踏まえ、その人物が長期的に思索(しさく)しているならなお良い。思索することで、本人なりの思想、成功哲学、人材育成法などが整理され、人にもわかりやすく説明できる。
プラウトヴィレッジは金銭がないので、各長の動機は内面に沸き起こる他者や社会への貢献心とやりがいが根本となる。つまり自分から先に与えられる人物のみが続けられる立場で、それによって自然と周囲から尊敬が得られる。プラウトヴィレッジに置ける理想的なリーダーは、次の要素を満たしていること。
・誠実さ
・実力
・挫折や修羅場の経験
・長期間の思索
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