国連は、今世紀中に世界の平均気温が最大3.1℃上昇する可能性があると警告する報告書を発表

 国連は、今世紀中に世界の平均気温が最大3.1℃上昇する可能性があると警告する報告書を発表しました。この予測は、現行の気候政策が続いた場合のもので、熱波や洪水などの異常気象が急増し、地球規模で深刻な影響をもたらすとされています。以下では、この報告書の主な内容や背景を要約し、気候変動がもたらす課題と今後の展望について考察します。

気温上昇の予測

国連環境計画(UNEP)の報告によれば、現在の政策が維持される場合、世界の平均気温は今世紀中に1.9℃から3.8℃上昇する可能性があります。この幅の中でも、最大3.1℃という数字は特に注目されています。現時点ではすでに産業革命前から1.1℃の上昇が確認されており、その影響は異常気象や海面上昇、農業への悪影響など、多岐にわたっています。

異常気象とその影響

熱波や洪水といった異常気象が頻発することで、屋外での作業が困難になるだけでなく、社会的・経済的な損害も増大します。たとえば、2024年10月にアメリカを襲った大型ハリケーン“ミルトン”は、気候変動が原因で雨量が増加し、風速も強まった結果、大きな被害をもたらしました。

また、気温上昇はエネルギー需要にも影響を及ぼしています。特に熱波の際には冷房の使用が増え、その結果、電力需要が急増しています。しかし、水力発電の供給能力が気候変動の影響で低下する場合、石炭火力発電への依存が再び高まるという悪循環が懸念されています。

炭素排出量の増加要因

2023年には、航空機利用の増加や陸上輸送の拡大が二酸化炭素排出量の増加を招きました。また、自動車や暖房システムの電動化が進む中、電力需要が高まり、その供給に化石燃料が使われることが多い現状があります。このように、気候変動に対応するための技術が、逆に炭素排出量を増やす結果になることもあるのです。

気温上昇抑制への取り組み

国連の報告書では、現行の炭素削減計画が完全に実行された場合、気温上昇を2.6℃から2.8℃に抑えられるとしています。さらに、すべての国が“ネットゼロ”と呼ばれる炭素排出量実質ゼロの目標を達成した場合、上昇幅を1.9℃に抑えることも可能だと示唆されています。しかし、この目標を実現するには各国のさらなる努力が必要であり、現在の行動ペースでは1.5℃未満に抑えるというパリ協定の目標達成が危ぶまれています。

国連の呼びかけ

2024年11月にアゼルバイジャンで開催される気候変動会議(COP29)では、各国が新たな炭素削減計画を提示する予定です。これらの計画は2035年までの目標を設定するものであり、今後の地球温暖化を抑制するための重要な指針となるでしょう。国連はこれを“今世紀における最も重要な文書の一つ”と位置づけています。

行動の遅れへの懸念

国連報告書によれば、COP26以降、各国は温暖化対策を約束してきましたが、実際の行動が追いついていない現状があります。特に、排出量削減の実施が遅れていることが目立ちます。この遅れは、気温上昇予測が改善されない要因の一つと考えられています。

結論と展望

気候変動は、自然環境だけでなく、人々の生活や経済活動にも深刻な影響を与えています。報告書が示すように、今後の地球温暖化を抑えるためには、現行政策の見直しと各国の迅速な行動が不可欠です。また、エネルギーの効率化や再生可能エネルギーの導入など、持続可能な社会を目指すための取り組みを強化する必要があります。

この報告書は、世界のリーダーたちにさらなる野心を促す重要な警鐘として受け止めるべきです。そして、気候変動というグローバルな課題に立ち向かうために、国際的な連携と具体的な行動が求められています。

https://www.bbc.com/japanese/articles/cvgl3ev216vo

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