プラウトヴィレッジは資本主義、社会主義に代わる社会制度で、お金が存在しない仕組み。持続可能な社会でもある。
戦争、貧困問題、自然破壊、気候変動、感染症と世界中でたくさんの社会問題が発生し続けている。一つずつの解決策を考えていると、平和な社会の実現ははるか遠くに思える。しかし、それらの問題の根本原因となっているある一点に気づけば、実は解決策はシンプルであることが見えてくる。その根本原因とは「お金の仕組み」のことで、あらゆる社会問題は、直接的、間接的にお金と関係している。
例えば国と国が争うのも国益を優先してのことで、資源を奪い、それをお金に変える。政治が腐敗する時も権力と高給、賄賂(わいろ)など何かしらお金が関係している。企業は商品を作って利益を得続けなければ存続できないので、原料となる資源の枯渇はやまない。自然破壊の問題も、破壊を行う企業の社員は一般市民で、お金を得て生活する必要があるので、自然破壊とわかっていても働くことはやめられない。気候変動と温暖化の原因は様々考えられているが、二酸化炭素の世界的な排出量増加は人間の経済活動つまりお金を稼ぐ活動が活発化したため。森林伐採の問題も、個人や企業が自由に土地を購入できてしまい、場合によってはそこの樹木や土地でお金儲けをするため木は切られ続ける。海の魚などの乱獲と生態系の変化についても、合法、非合法にかかわらず漁師も魚を取ってお金を稼がなければ生活できないので漁を続けるしかない。ゴミ問題も、例えばスーパーマーケットで売られる食品を作る企業は、消費者に気に入ってもらってお金を稼ぎ続けなければ経営が続かないので、過剰なビニール包装などで商品の見栄えと安全を強調する。その分、家庭からのゴミの量は増え、焼却しきれないゴミも増え、川や海に捨てられるゴミも増える。電化製品なども、商品を多めに作っておいて消費者がすぐ購入できる状態にする。客を待たせて利益を逃すよりは良いからだが、それによって捨てられる在庫が増える。企業の長時間労働の問題も、社員は給料を得て生活を維持しなければならないので、会社から残業を命じられれば従わざるをえなくなる。所得格差の問題も、そもそもお金を稼ぐことに長けた人とそうでない人がいるので、これを防ぐ手立てはない。それは運動が得意な人と苦手な人がいることと同じ。また窃盗や麻薬販売者がなくならないのも、それで利益を得て生活費を稼ぐことができるから。路上生活者が世界中に存在するのもお金がないため。日本の人口減少と少子化の問題も、将来的に労働力が減り、国としての競争力が落ちることで国益・利益が減ることが問題となっている。年金の受給額の減少や年金制度の崩壊も、お金にまつわる問題。自然災害によって街が破壊された時も復興にはお金が必要となる。感染症の問題も、人々は仕事をして給料を稼がなければならず、そのため人と接触するので感染が広がる。
世界中の多くの人が解決策を考えてきた。しかし社会問題の数は、減るどころか山積みとなっている。これらの根本的原因は結局のところ、お金で生活を成り立たせている貨幣社会が不完全なため。この部分を変えなければ、問題はいつまでたってもなくなることはない。そのために、人間は自分達の生き方を考え直す必要がある。それは、何のために生き、どのようにして暮らしていかなければならないかということ。人間が生きていくためには自然も科学技術も必要だが、ここからはプラウトヴィレッジとはどういった社会かについてまとめている。簡単な結論から言えば次のような世界となる。
世界各地域では6万人前後の住民からなる直径4kmの円形のプラウトヴィレッジという自治体が基本となり、住居、家電、食料、電力、教育、医療など生活品はすべて地元の資源で、地元の住民によって作られ、よってそれらを誰もが無償で享受する。住居は自然素材を使用し、自然へ返せる造りが基本となる。この住居は竹、石、土など自然素材が使用され、高気密、高断熱化された住居で終日冷暖房が行われる。その住居を誰もが自治体から無償で借り受ける。
家電など生活品も手作業か3Dプリンタで作る。生活品は地域で採集できる原料内で生産され、無料で得る。生産数は住民の人数分が上限となり、製品は再利用を前提とした設計となるため原料の採集は必要最低限になり、資源の枯渇と自然破壊が無くなる。
そして家庭からの排水はすべて住居隣から地面へ浸透させる。その為に化学物質が入った洗剤、石鹸、シャンプーではなく、精油(エッセンシャルオイル)、70度以上のお湯、サトウキビなど植物由来エタノールを使用する。これによって海も川も汚染されることはなくなり、もとの澄んだ状態に戻る。
電力は海や川などでの振り子式潮流(ちょうりゅう)発電やマグネシウム電池を基本に考え、それに様々な発電技術を組み合わせる。振り子式潮流(ちょうりゅう)発電は大規模な設備を必要とせず、昼夜関係なく発電できる。あとは数を増やし発電量を多くする。そこに刈り取った草や生ゴミからガスを得るバイオマス発電や、小型の風力発電を組み合わせる。こうして発電源を多様化して合計量を増やす。こうして電力は海や自治体の至る所で作られる。
食料は各家庭に提供される農地で、農薬を使わず自然の力に任せる自然農法や、自宅での水耕栽培で自給自足を行う。水耕栽培による食物は季節問わず安定的に得ることができる。これらにより土壌汚染がなくなり、貧困に陥いる住民もいなくなる。
医療は薬用植物など自然医療が基本となり、食生活も穀物菜食が主となり、病気になることが大幅に減る。病院も自治体の中心部に作られ、無料で利用できる。そのため利益目的ではない天職・適職レベルの人物が医者となる。
地元の森林も自治体が管理し、生涯残す樹木と伐採用樹木を区別して管理し、計画的に植樹もする。そうすることで、自然の多い自治体が世界中で維持される。
教育は貨幣社会のような学校はなくなる。プラウトヴィレッジでは子供から大人まで、誰もが好きなことを一人もしくはグループで行なっている。つまりそのグループやサークルが基本単位となり、塾を選ぶように子供や大人が好きなものを選択して参加するか、独自に活動する。そして誰もが朝から好奇心のあることに自己責任で取り組むことを幼年期から行い、周囲はそれに干渉しない環境を作ることで、早期の自立と天職、適職の発見を促す。
朝から晩まで働くような仕事はなく、住民の労働は公共事業がある場合のみ。それは週に数時間あるかないか。それ以外の時間は自分の好きなことをして過ごす。そして学校、会社、自然破壊、汚染、ゴミ、貨幣、税、貧困などはなくなる。年金制度もなく、食べ物も住居も自分たちで作るので、誰もが生涯不自由なく生きていける。
もし自然災害が起こり自治体が破壊されても、復興は地元の資源で行うため資金は必要なく、復興後の経済がうまく回るかも考える必要がない。必要なのは人手と地元の資源と3Dプリンタであり、人々には自由な時間があるので復興も迅速に行われる。
こういった自治体で構成される国が増え、文化と多様性が尊重され、各国へはパスポートなしで自由に行き来できる。主な交通手段は、自治体内では地上を時速20キロで走る自動車、自治体間の中長距離移動は電車で、全て電気が動力源。プラウトヴィレッジでの生活にはスピードを求められる仕事がなく、誰もがのんびり生活しているため、地上ではスピードではなく安全運転が第一優先となる。また自治体の端(はし)から中心までの半径は2kmなので、時速20キロで走っても15分で到着する。遠出をする時は電車で移動し、着いた先の自治体で車を借りて目的地に向かう。こういったことにより、交通事故とそれによる死亡数のどちらもゼロを目指す。
地中には送電線が組み込まれ、世界中が結ばれる。すると昼間の地域の余剰電力は、その間夜の地域で使用される。
このようにしてつながった世界は、各国の代表者が集まる世界連邦という1つの組織によって統治され、国境はなくなり、貧困もなくなり、金銭や資源目当ての戦争も起こる理由がなくなる。世界の行き来が自由になることによって民族の交流が盛んになり混血も進むので、何千年後の地球は、あらゆる民族が混ざり合った星となる。
これは持続可能で人間の能力が最大限に発揮される社会の在り方で、貨幣がない社会。資本主義社会では金銭を得るため定年まで一日長時間働かなければならないが、地域社会が中心となり、地域の住民分だけ生産する社会に移行すれば、必要最低限の公共事業と資源の採集で事足りる。
生活品が無償で与えられれば怠け者が生まれるという意見もあるが、怠け者が生まれる時は、嫌なことをさせられている時であり、それは生活費を稼ぐために仕方なく働かなければならない貨幣社会だからこそ多く生まれる。嫌な勉強を無理矢理させれば子供も怠けるが、放課後になれば好きなことをして活動的に過ごす。これは大人も同じ。プラウトヴィレッジではのんびり過ごす人が増える。
プラウトヴィレッジを作れば、世界中で見られる陸・海・空の環境破壊や社会問題はなくなる。しかし人間にとっては別の問題が残る。それは人間の人生は、怒り、後悔、不安、嫉妬、劣等感などの苦しみに満ちており、それらは人間の自我(エゴ)が原因となっている。この自我があることで思考し、思考が苦しみを生む。この思考を静めて無心になれば、苦しみが消える。それは意識を一点に集中させることで可能となる。この継続によって無心が習慣化され、心穏やかな人生を作り出す。つまりプラウトヴィレッジでは、人間の内面と外面の両方に取り組む。
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