■紀元前1万年頃
トルコのギョベクリ・テペ
トルコのギョベクリ・テペの遺跡は、紀元前1万年から紀元前8000年の期間に建てられたとされる。
ギョベクリ・テペの遺跡には、巨大なT字型の石柱がいくつも円を描くように並べられている。石柱の総数は200本以上。それらの描き出す円が20個確認されている。石柱によっては6メートル以上、重さは20トン。それらが基盤岩に開けられた穴にはめ込まれている。
この遺跡から見つかった像は、イースター島のモアイ像と手の形と置き場所が似ている。イースター島にも切込み接(は)ぎの石積みがあり、モアイ像の胸の部分にも黄金比の渦模様がある。
その像の耳の曲線は黄金比。
ギョベクリ・テペの別の像は胸を触るポーズをしている。これは世界中の女神像と同じ。
この像の中段左右に、二匹の蛇の彫刻が見られる。また下の右の画像はギョベクリ・テペの隣にある同じ時代のネヴァリ・コリから出土している像。後頭部に1匹の蛇が見られるが、アイオーンも頭の後ろから蛇が見られる。
ギョベクリ・テペの女神像。胸を触るポーズ、下半身が太いなど、各地の女神像の共通点が見られる。
ギョベクリ・テペの石柱
ギョベクリ・テペの石柱には、ハンドバックの彫刻が見られる。これと同じものが、紀元前3000年頃のイランのジーロフト文化に見られた。
ジーロフト文化からは石のハンドバックが出土している。そこに2匹の蛇が見られた。
ギョベクリ・テペの石柱のハンドバックの左下に鷲(わし)の彫刻が見られ、その下にはサソリも見られる。
ジーロフト文化のサソリや鷲が描かれたハンドバック。
別の石柱には、1匹の蛇、2匹の蛇の彫刻も見られる。つまり、この石柱に彫られた絵すべてが、シンボルということが見えてくる。また宗教や信仰があったと考えられる。
この石柱の一番下にいる足の長い鳥はトキ(左の画像はアフリカクロトキ)のように見える。同様の鳥は最上部左のハンドバックの上にも、小さく見られる。
上部右端のハンドバックの右下に、H型のシンボルも見られる。
このH型の図柄は他の石柱でも見られ、蛇の彫刻が刻まれている場合もある。
石柱のハンドバックの上下にはジグザグ模様のシンボルもあり、これも各地で見られるシンボル。
違う石柱には牙の出たイノシシのシンボルも見られ、それと同じ石像も見つかっている。
石柱の右端のハンドバックの右上に、シッポの長いトカゲが刻まれている。サバジオスの手にもトカゲが見られる。
石柱の横には犬のような動物も見られる。
犬を横から見たような彫刻もいくつか見られる。
縄文土器
縄文時代は紀元前14000年頃から紀元前800年頃まで続く。次の画像は紀元前1万年〜前5000年の早期の縄文土器。左側の土器の下半分と、右側の土器の上と下部分にジグザグ模様が見られる。
■紀元前6000年頃
古代中国
興隆窪(こうりゅうわ)文化は中国の遼寧省(りょうねいしょう)周辺で、紀元前6200年頃から紀元前5400年頃に存在した。紀元前6000年頃の胸を触る女神像も、興隆窪(こうりゅうわ)文化より出土している。
■紀元前5700年
ヴィンチャ文明
紀元前5700年から紀元前4200年頃までヴィンチャ文明が起こる。
ヴィンチャ文明の土偶と日本の縄文土偶は、ポーズやデザインが似ている。共通点は、胸が出ている、手を広げている、十字の姿。
日本の縄文土偶。
左はヴィンチャ文明、右は縄文土偶。
左はヴィンチャ文明、右は縄文土偶。
次の4つの像はすべてヴィンチャ文明。一番左の像は授乳しており、エジプトのイシスとホルスの像やインドのクリシュナとヤショーダの像などと同じポーズ。また下半身が太い像も見つかっており、各地の女神像と共通している。
■紀元前5400年頃
メソポタミアのエリドゥ
この頃、中東に都市が存在した。トルコのチャタル・ヒュユク、パレスチナのエリコのテル・エッ・スルタンの遺丘(いきゅう)、メソポタミアのエリドゥなど。
エリドゥのテル・アブ・シャハライン遺跡は外枠に若干の歪みがあるが、黄金比の比率を見ることができる。小部屋の大きさも黄金比で、大外の黄金比の中にできる小さな黄金比の大きさになっている。
古代中国の出土品
紀元前5400年から紀元前4500年頃の趙宝溝(ちょうほうこう)文化の小山遺跡からは、鹿、猪(いのしし)、鳥の頭を持った龍の土器が発見された。
■紀元前4700年頃
中国の紅山文化、仰韶文化
紀元前4700年頃から前2900年頃までの紅山(こうさん)文化やその他の地域からも、胸を触った像や下半身が太い像が出土している。
紀元前4400年頃の仰韶(ぎょうしょう)文化の西水坡遺跡(せいすいはいせき)からは、貝殻を埋込んで描かれた龍虎(りゅうこ)が発見されている。下の画像では骸骨(がいこつ)の左側に竜、右側に虎。中国のバイ族の創世神話に竜が出てきたので、竜もシンボルという結論だった。
ギョベクリ・テペ、ジーロフト文化、ヴィンチャ文明は地理的にも近いので、シンボルが受け継がれていったと推察できる。中国や日本でも女神像やジグザグ模様の共通シンボルが見られたので、この頃すでに世界中には、出どころを一緒とするシンボルや信仰があったと考えられる。それが、世界最古の文明と言われるメソポタミア文明につながっていく。
■紀元前4000年頃
メソポタミア文明の人類初のお金
メソポタミア文明で人類初のお金が登場する。お金と言っても、労働者は自分の鉢(はち)に麦を入れてもらい給料としていた。麦のお金が普及したテル・ブラクでは、お金によって争いが起きた。
■紀元前3600年
地中海のマルタ島
地中海のマルタ島とゴゾ島。紀元前3600年から紀元前2500年ごろに建設されたこの神殿群にも、切込み接(は)ぎの石積み、女神像、黄金比の渦模様が見られる。また、巨人がこれらの神殿を建て、礼拝所として使ったという巨人伝説も残っている。
ゴゾ島より出土の巨石の黄金比の渦模様。
■紀元前3500年頃
シュメールの発展
シュメールの主要都市ウルが都市として拡張を始める。文字、法律、農耕、灌漑(かんがい)工事、航海術、天文学、学校設立、二院制議会、法典の編纂(へんさん)、1分60秒などの60進法、占星術の12星座など高度な文明が花開いた。人口は34,000人ほど。
■紀元前3150年頃
エジプトのファラオ
エジプト第一王朝のファラオであるナルメル王が上下エジプトを統一したことを示す「ナルメルのパレット」が、都市ネケンのホルスの神殿で出土している。次の画像右側の2頭のライオンの首が絡み合う構図は、2匹の蛇が絡み合う杖カドゥケウスと似た構図。
このナルメルと同一人物とされている前ファラオのスコルピオン2世(紀元前3150年頃〜前3125年頃)の顔の横に、サソリが描かれた出土品が見つかっている。サソリのシンボルもギョベクリ・テペの石柱で見られた。
上下エジプト統一時に首都メンフィスで信仰された神プタハも、手に十字のアンクやジェド柱を持つ。アンクやジェド柱は蛇の紀章ウラエウスとも一緒に見られるので、プタハも無をシンボル的に表した神ということ。
都市メンフィスで信仰された聖なる牛アピスはプタハの化身。またオシリスの牡牛(おうし)とも呼ばれた。
■紀元前3000年頃
縄文時代中期
紀元前3000年頃の縄文時代中期から、縄文土偶や火焔(かえん)土器が盛んに見られる。これらには黄金比の渦模様も見られ、つまり無を崇めた信仰。
縄文時代の遮光器(しゃこうき)土偶にも黄金比や渦模様が見られ、下半身も太い。
渦模様、胸が出て下半身が太い女神像など。
紀元前3000年頃の縄文時代の「子抱き土偶」。東京都八王子市宮田遺跡から出土。授乳するポーズもサバジオスの手の下部に見られ、共通のシンボルだった。
イギリスのストーンヘンジ
ストーンヘンジにも切込み接(は)ぎの石積みのように、上に乗る石が支柱に合わせて形を調整されている部分がある。
ストーンヘンジで儀式を行うドルイドは、ケルト人社会の祭司のこと。
ドルイドの持つ絵には、ピラミッドや天秤のシンボルが見られる。
天秤もサバジオスの手で見られるシンボル。
イランのジーロフト文化
紀元前3000年頃から紀元前2000年頃まで栄えたイランのジーロフト文化。ここより出土の石のハンドバックには2匹の蛇も見られ、共通のシンボルという結論だった。
イラン、インド、ローマ帝国のミトラ教
ミトラスを主神とするミトラ教の浮彫(うきぼり)には、1匹の蛇に向かって2匹の蛇の杖カドゥケウスを向けているミトラスが見られる。つまりミトラスもシンボル的に表した存在。
別の像では、牡牛(おうし)を屠(ほふ)るミトラスが見られる。そこで犬と蛇は牡牛の血を飲もうとし、サソリが牡牛の睾丸(こうがん)を攻撃している。犬、蛇、サソリは共通シンボルで、トルコのギョベクリ・テペの石柱にも見られた。
ミトラ教では獅子頭と翼を持った神像も、40体ほど発見されている。これは2匹の蛇の絵が足下にあるアイオーンのこと。この像の右太ももにサソリが彫刻されている。つまりミトラ教も無を表したもの。
アンズー、グリフォン、ヒッポグリフ、麒麟(きりん)
メソポタミア神話の怪物ズーもしくはアンズーは、ライオンの頭と鷲(わし)の体で表される。ライオンも鷲(わし)もシンボル。これはシュメール神話のエンリルの随獣とされる。
伝説上の生物グリフォンもアンズーと似ており、鷲(わし)の上半身と翼、ライオンの下半身と、共通のシンボルを持つ。
グリフォンと雌馬(めすうま)の間に生まれたというヒッポグリフは、身体の前が鷲(わし)、後ろが馬。
足が馬というヒッポグリフに似た動物は、中国神話の麒麟(きりん)。背丈は5m、顔は龍に似て、牛の尾と馬の蹄(ひづめ)をもつ。
中国の竜は無のシンボルという結論だった。麒麟(きりん)は、中国の黄竜(こうりゅう)と同一視されている。つまり無=竜=麒麟。中国の紫禁城には獅子像が二体置かれているが、紫禁城には二体の麒麟(きりん)も置かれている。つまり獅子像も麒麟(きりん)も無を表している。
このようにアンズー、グリフォン、ヒッポグリフ、麒麟(きりん)は容姿が似ているだけでなく、これらは無のシンボルという結論。
稲妻、三叉槍、金剛杵、ヴァジュラ
次のメソポタミアの浮き彫りの左の動物は、ライオン頭でワシの体のアンズー。このアンズーと戦っている人物もシンボル的存在となる。理由としては、両手に持っている稲妻の金剛杵(こんごうしょ)という道具を、アイオーンも胸に垂れ下げている。
アイオーンの胸の金剛杵。
メソポタミアのアッカドの気象神アダド(シリアではハダド)の手にも、金剛杵が見られる。アダドは雨風によって肥沃(ひよく)をもたらす豊穣神と、暴風雨、雷、洪水によって自然を破壊し、暗黒と死をもたらす性格があり、頭には牛の角が見られる。
アダドが彼のシンボルの牡牛(おうし)に乗る姿の浮彫もあり、手に金剛杵を持っている。
左はアダドと有翼円盤。右側のアダドは斧(おの)も持っている。
また別の牡牛に乗ったアダドの浮き彫りでは、金剛杵の稲妻が先端にありながら下側が長い三叉槍(さんさそう)を持っている。三叉槍はギリシア神話の海と地震を司る神ポセイドンや、ローマ神話の海の神ネプチューン(ネプトゥーヌス)も持っている。
インド神話におけるシヴァの武器も三叉槍。つまりこれらも共通シンボル。
さらに三叉槍は、中国三大宗教の儒教・仏教・道教のうち、道教の最高神格の三清(さんせい)も表す。
ギリシア神話の主神で全知全能の神ゼウスも、手に金剛杵を持っている。ゼウスは天空神として、全宇宙や雲・雨・雪・雷などの気象を支配していた。ゼウスはローマ神話ではジュピター(ユーピテル)と呼ばれている。
別のゼウスの像には2羽の鷲(わし)が見られ、上の画像のジュピターの隣にも鷲(わし)がいる。
稲妻の道具は金剛杵やヴァジュラと呼ばれ、インド神話ではインドラ(帝釈天)の武器。インドの聖典バガヴァッド・ギーターでは「私(プルシャ、ブラフマン)は武器のうちのヴァジュラ(金剛杵)である。」と述べられている。プルシャもブラフマンも無のシンボルだった。
仏教の金剛力士(こんごうりきし)も、金剛杵を持つ。口の阿形(あぎょう)像と、口を結んだ吽形(うんぎょう)像の二体を一対とし、寺院の表門などに立っている。阿呍(あうん)は神社の狛犬とも同じで獅子像でもあるので無のシンボルだが、つまり金剛力士も無をシンボル的に表したもの。一般には仁王(におう)の名で親しまれている。密教ではこの阿吽の2字が存在する全ての始まりであり、究極を象徴するとされる。「阿(あ、a)」はサンスクリット語のアルファベットの最初の文字で、「吽(うん、huum)」は最後の文字。つまり始まりと終わりを表す。それを漢字で表現したものが阿吽(あうん)。つまり無を表す言葉。
執金剛神(しゅこんごうしん)も金剛杵を持ち、インドではヴァジュラパーニと呼ばれる。これは金剛力士と同じ。ただ金剛力士は2人の裸姿だが、執金剛神は1人の武将姿。これはギリシア神話の英雄ヘラクレスが起源とされている。ヘラクレスは「獅子の毛皮を身にまとい、手に棍棒を持つ髭面の男性」。
ローマ・カピトリーノ美術館にあるヘラクレスの像では、両手に2匹の蛇をつかんでいる。
つまり2匹の蛇でヘラクレスも無を表し、手に持つ棍棒はデザインの違う金剛杵となる。棍棒もシンボルとして、インドの聖典バガヴァッド・ギーターの中でも見られる。
アルジュナは聖バガヴァッド(私、プルシャ、ブラフマン、=無)に、あなたの姿が見たいと述べた。そして姿を見せた聖バガヴァッドに対しアルジュナは言った。「神よ、私はあなたの身体のうちに神々を見る。(中略)王冠をつけ、棍棒を持ち、円盤を持ち、一切の方角に輝きわたる光輝の塊であるあなたを見る」と。
仏教の金剛夜叉明王(こんごうやしゃみょうおう)も金剛杵を持ち、さらに蛇1匹も持つ。
仏教の金剛夜叉明王がいる五大明王で中心となる不動明王(ふどうみょうおう)も、ヒモ状の金剛杵を持っている。また剣の持つ部分が金剛杵になっている。不動明王は大日如来(だいにちにょらい)の化身とも言われる。
他の五大明王の降三世明王(ごうざんぜみょうおう)、軍荼利明王(ぐんだりみょうおう)、大威徳明王(だいいとくみょうおう)も金剛杵を持ち、蛇が体に巻き付いている場合もある。つまり五大明王も無の共通シンボルで表されたもの。
仏教の五大明王の大威徳明王は、阿弥陀如来(あみだにょらい)と文殊菩薩(もんじゅぼさつ)のこと。阿弥陀如来で有名なものは鎌倉の大仏。奈良の大仏は毘盧遮那仏(びるしゃなぶつ)と呼び、密教では大日如来と同じで、その化身が仏教の五大明王の中心となる不動明王。つまり鎌倉も奈良も、どちらの大仏も無を表す。奈良の大仏はゴータマ・シッダールタを超えた宇宙仏で、宇宙の真理を全ての人に照らし、悟りに導く仏とされている。
このようにメソポタミアのアッカド神話、ギリシャ神話、ローマ神話、インド神話、ヒンドゥー教、仏教、密教はシンボルでつながっていて、その神もシンボルもすべて無を表す。
松ぼっくりを持つ神
古代ローマの神アイオーンの足下には2匹の蛇や松ぼっくりが見られ、これが無の象徴という結論だった。その松ぼっくりを持つ神も様々な場所や宗教で見られる。
メソポタミアでも、ハンドバックを持つ人物の反対の手に松ぼっくりも見られた。
ギリシア神話では、テュルソスという松ぼっくりを先端につけた杖が登場する。古代ギリシアの宗教でこの杖は、ディオニュソスとその信者が持っていた。ローマ神話ではバックスと呼ばれ、ローマ神話のワインの神。
杖テュルソスとブドウのシンボルが描かれた浮彫りがある。ここにはタニト、三日月、太陽などもあり、シンボルをまとまっている。
杖テュルソスは時に、壺(つぼ=カンタロ)と呼ばれるワインを飲むための陶器とも関連付けられる。壺は日本で言えば飲み物を入れる容器のピッチャー。ディオニュソスもこの壺(カンタロ)とともに描かれている。
ギリシアのアテナイのアクロポリスには、ディオニュソス劇場がある。1万5千人以上を収容でき、紀元前6世紀頃の建造物とされる。紀元前4世紀(ローマ時代)に改築された当時のものが現在でも残っており、ディオニュソスの生涯をモチーフとした浮き彫りなども見ることができる。この劇場は、毎年春の大ディオニュシア祭において、ディオニュソスに捧げる悲劇(ギリシア悲劇)を上演するために用いられた。
ギリシア神話、ローマ神話のマイナスは、ディオニュソス、バックスの女性信奉者。彼女も松ぼっくりのついた杖テュルソスを持ち運んでいる。
イタリア・ローマのナヴォーナ広場には、ライオンが松ぼっくりを加えた彫刻が見られる。
サバジオスはフリギアやトラキアの神で、ギリシアのディオニュソスやその前身のザグレウスと同一視され、ゼウス、アッティスとも同一視された。サバジオスの像には松ぼっくり、鷲(わし)、アスクレピオスの杖が見られた。
サバジオスの手
「サバジオスの手」の像はいくつか種類があり、無数のシンボルが装飾がされている。
目立つものに、1匹の蛇、松ぼっくり、鷲(わし)。
2匹の蛇が絡まった杖のカドゥケウス。
ディオニュソスが持つ壺(カンタロ)。
手の甲には天秤。
カエル、亀、トカゲ。
別のサバジオスの手には人物も見られ、頭に三日月が装飾されている。三日月はメソポタミアの円筒印章でも見られる。
羊のシンボル。
子供と寝そべる、もしくは授乳する女性。
次のサバジオスの浮き彫りにもサバジオスの手と共通するシンボルが見られ、左右2本の柱と三角屋根もシンボルということ。
エジプトのシンボルと神
2匹の蛇は、エジプトの有翼円盤(ゆうよくえんばん)にも見られた。例えばコム・オンボ神殿の有翼円盤の中央の2匹の蛇。
メディネット・ハブの有翼円盤と2匹の蛇。
エジプト出土の蛇1匹のウラエウスと有翼の組み合わせ。
エジプトのデンデラ神殿には有翼円盤が2つ並んでおり、上側は2匹の蛇、下側はスカラベという昆虫が中央にいる。
古代エジプトではスカラベを太陽神ケプリと同一視した。ケプリはエジプト神話における太陽神ラーの形態の一つ。つまり有翼円盤、スカラベ、太陽神ケプリ、太陽神ラーも無を表す。
古代エジプトでは太陽と月はハヤブサの姿、あるいは天空神ホルスの両目(ホルスの目)と考えられてきた。やがて二つの目は区別され、左目は神ウアジェトの目で月の象徴、右目はラーの目で太陽の象徴とされた。ウアジェトはコブラの姿、あるいは頭上にコブラをつけたライオン女性の姿で描かれる。
ウアジェトの頭頂の蛇の記章(きしょう)はウラエウスという。ウラエウスの背後の丸い太陽も有翼円盤に見られる。ウラエウスはツタンカーメンの額にも装飾されている。
ウラエウスの頭部を持つ女性としてや、女性の頭部を持つコブラとして描かれる女神メルセゲルは2匹の蛇で描かれていることもあり、これも無を表したものという結論。
ここまで登場したアヌビス、ホルス、ケプリ、ウアジェト、メルセゲルは共通して、アンクという十字を手に持っている。つまりアンク、これら神々、エジプト神話も全てが無を表した物語という結論。
左からアヌビス、ホルス、ケプリ、ウアジェト、メルセゲル。
ゾロアスター教
イランにあった紀元前3000年のゾロアスター教には、有翼円盤とそこに乗る守護霊フラワシが見られる。フラワシは無のことで、この世の森羅万象に宿り、あらゆる自然現象を起こす霊的存在。
このフラワシが手に持っている輪(わ)は、エジプトのウラエウスの横に描かれている輪や、バビロニアの女神イシュタル像の持つ輪と同じで、共通のシンボル。これは神の持ち物であった「棒と輪」。
ゾロアスター教の最高神アフラ・マズダーも、手に輪と2本のヒモがついた王冠と笏(しゃく)を持つ。
次の画像は、イラン西部の遺跡ターク・イ・ブスタン。アフラ・マズダは中央の人物で、頭に三日月を乗せて王冠(輪と2本のヒモ)を渡している。
三日月のシンボルもサバジオスの手やエジプトの装飾品で見られた。
有翼円盤とフラワシは様々な場所で見られる。その一部は弓矢を手に持っていたり、牛の角の冠をしていることから、これも共通シンボルの一つという結論だった。次の左の画像の弓を持った人物は、メソポタミアの都市アッシュールを守護するアッシュール神。
次はペルセポリスにあるアルタクセルクセス3世の墓所の浮き彫り。ここには有翼円盤に乗るフラワシと、弓矢を持つ人物、三日月、段々のへこみがある台などのシンボルが見られる。
また別の場所の有翼円盤とフラワシの彫刻の下には、菱形の網目状の装飾が見られる。この菱形も、シンボルが描かれたトルコのギョベクリ・テペの石柱に見られた。
メヘンガルの像
パキスタンにあった紀元前3000年頃のメヘンガルの女神像。胸が出ている、胸に手を当てるポーズ、腰回りが太い。
メヘンガルの出土品。
■紀元前2700年頃
パキスタンの大都市モヘンジョダロ
モヘンジョダロ出土の神官王の王冠にも二本の纓(えい)がついている。同じ王冠は縄文土偶、天皇、ゾロアスター教のアフラ・マズダーにも見られる。
モヘンジョダロからは胸を触る女神像も出土している。
マルグシュの遺跡
トルクメニスタンのマルグジュ遺跡からは、2匹の蛇が刻まれた出土品が見つかっている。
■紀元前2500年頃
ギザの三大ピラミッド
エジプトの三大ピラミッドは、オリオン座の三つ星の配列で並んでいた。ピラミッドも共通のシンボルという結論だった。
次の左の画像の、3つのピラミッドの大外(おおそと)に合わせて横向きの黄金比を2つ上下に並べると、ちょうど黄金比2つ分の大きさに3つのピラミッドが収まる。また同じ方法で右の画像のように縦に2つの黄金比を並べると、紫の黄金比の中の比率(赤い矢印)にカフラー王のピラミッドの幅が当てはまる。また同時に右の画像の紫の黄金比の中にできる3個目に小さな黄金比の四角形部分と、4個目にできる小さな黄金比の幅に、ピラミッドの間隔が決められている(緑色の黄金比)。
ピラミッドとスフィンクス
三大ピラミッドにも、各国の巨石建造物に共通する切込み接(は)ぎの石積みが見られる。
クフ王のピラミッドの内部の「王の間」の石畳(いしだたみ)にも、切込み接(は)ぎの石が見られる。
メンカウラー王のピラミッドの入口にも、切込み接(は)ぎの石積みが見られる。
さらに、ピラミッドのそばにあるスフィンクスの左前足にも切込み接(は)ぎの石積みが見られる。
エジプトのアヌビス
エジプト神話に登場するアヌビスはミイラ作りの神。犬やジャッカルの頭部を持つ半獣か、ジャッカルの姿で描かれた。バチカン美術館のアヌビス像は、ギリシア神話の神ヘルメスと融合して、ヘルマニビスともいわれる。そこには2匹の蛇のカドゥケウスの杖を持っている。
共通シンボルであった天秤を使用するアヌビス。
ホルス、オシリス、イシス
次の左の画像はエジプトの幼い頃のホルス神で、両手に2匹の蛇とサソリを持っている。中央の画像は、左からホルス、オシリス、イシス。ホルスとイシスは右の画像のように授乳する女神像もある。中央のオシリスがかぶっている冠は、ホルスの目の装飾品の左隣にいる鷲(わし)もかぶっている。
ベンベン
エジプトのベンベンはピラミッド型の石。次の左の画像では有翼円盤が刻まれている。
ベンは「何回も生む・生まれる」という意味で、ベンベンは「何回も何回も」で永遠を意味し、再生と復活をつかさどる精霊が宿るとされた。エジプトのヘリオポリス創世神話では、ベンベンは原初の水ヌンから最初に顔を出し、神が最初に降り立った原初の丘のこと。ベンベン石はピラミッドやオベリスクの頂上に置かれた。
このようにピラミッド、有翼円盤の彫刻、永遠、再生と復活、原初の水ヌンから生まれたなどのシンボルが見られるので、ベンベンも無を表す。ベンベンは後の時代に各地で作られている。
バチカン市国のサン・ピエトロ広場のオベリスク。
アメリカのワシントン記念塔や、イタリアのローマのナヴォーナ広場のオベリスク。
イギリスのロンドンと、フランスのパリのオベリスク。
■紀元前2115年
ウルのジッグラトの黄金比
メソポタミアのウルのジッグラトは階段ピラミッドに分類され、黄金比の比率も見られる。
■紀元前2070年頃
夏(か)の創始者の禹(う)
紀元前2070〜前2000年ごろに中国で夏(か)が始まる。中華の華(か)は、古代には夏(か)と同じ意で用いられた。夏(か)の創始者は禹(う)と言う。
中国の青銅器
中国の青銅器文化は紀元前2000年頃から。夏(か)王朝と殷(いん)の青銅器に細かい文様が見られる。下の画像は紀元前1000年頃の酒器。黄金比の渦模様も見られる。
黄金比、渦模様、フクロウのシンボル。
易経(えききょう)
易経は中国最古の書物であり、陰と陽を六つずつ組み合わせた六十四卦(ろくじゅうしけ)によって、自然と人生の変化の法則を説く。易経の著者は伝説では伏羲(ふっき)とされ、二匹の蛇として見られた。
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