○組織とリーダー [4]

  リーダーが粗野であると、粗野ではないスタッフはそのグループに属していることを恥に感じる。特に他人に知られた時は。


 リーダーには肩書きよりも信用が必要。信用を得るには誠実さと実力。信用があれば、肩書きがなくてもスタッフは信頼して話を聞き、動く。肩書きだけでは、スタッフはとりあえず表面上は従っているように装う。



 自我の強い者が親分になると、その後に待ち受けるパターンはある程度似てくる。それは次のように進む。

 自我が強い者が親分になると類は友を呼び、同じく自我の強い者がその周囲に集まってくる。それが子分となり、イエスマンになる。その子分はゴマをするのが上手く、親分が喜びそうな一言や行動を巧みに見せる。そして親分から特別扱いを受け、早く昇進したり、特別なポジションを与えられ、給与や取り分が他よりも多かったりする。

 親分も子分も我欲が強いため、自分達ばかり優先する。すると組織にいるまじめに働く他のメンバーは、一生懸命働くことが虚しく馬鹿らしく感じてくる。そして組織の連帯感や自制心はなくなってきて、あきらめもあり注意することもなくなってくる。こうして組織の腐敗や汚職が進む。

 この段階になるともうまじめなメンバーが、親分や子分達の行動を指摘して止めることは難しくなる。なぜなら自我の強い者は攻撃的でいじめ体質であり、指摘しようとする者は自分が攻撃され解雇される危険性を感じるため。

 自我が強いという性格の似た者同士、気が合い、親分と子分の初期段階の関係性は心地が良い。ところが欲望を自制する力に欠けるため、親分はやり過ぎることが増え、安定した決断に欠ける。例えば自分の取り分だけ異常に多かったり、組織の資産を不正に使用したり、節度のない指示が多くなったりなど。子分も自分たちへの分配が親分ほどに多くなければ妬み、不満が溜まってくる。子分達は基本イエスマンで、親分を恐れているため面と向かって主張することはほとんどできない。       

 そうして誰も親分の暴走を止めることはできず、組織の運営が傾き、子分達も自分の危険を感じ始める。すると今度はその子分達が親分の敵になり始める。そうして内部分裂が始まり、それまで自分たちが親分にゴマをすって特別扱いを受けていたことはなかったかのように振る舞い、正義を振りかざし始める。ここで典型的なのは、我欲の強い親分はどんなに自分が悪くてもそれを他者のせいにでき、嘘をついてでも自分は被害者だと主張する。またそれを外部の人間に真っ先に主張し、仲間を増やして優位な状況を築こうとする。この時、場合によって親分は現場から逃げ、身を隠す。

 その後、運よく組織は潰れず、紆余曲折あり親分が組織から去ったとする。これで問題が解決するかというとそうはならない。前の親分と似た自我の強い子分達の誰かが新しく親分になり、影響力のある立場につくと同じことが繰り返される。この時まじめなメンバーが子分達の過去の過ちを指摘しても、子分はそれを認めず、すべて前の親分の責任にする。つまり自我の強い者は常に誰かのせいにするため同じことを繰り返し、成長がない。そして当たり前のようにその後、自分たちだけ取り分が多かったり、特別扱いをするということが起きる。こうして負の連鎖は続く。

 この連鎖を断ち切るには、自我の強いメンバーを一新するしかない。ただ子分達は我欲が強いため仕事を意欲的にこなすタイプが多く、内外への影響力も大きい。だから子分達を一新するのは、よほど次の誠実な親分に実力と覚悟がないと難しく、子分達から恨みを買うことも恐れない勇気がいる。つまりこうなる前に、親分を選ぶ段階で、その人物は自我が強いかどうかを見極め、誠実な者を選ぶよう心がけなければならない。良くも悪くも結局、その影響は組織の全員に帰ってくる。そしてその組織を立て直すには膨大なエネルギーがいる。


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