出所が一つの各宗教

 ここまで見てきたシンボル、その年代、場所を見てみると、宗教や信仰は出どころが一つで、そこから各地で発展してきたということが浮かび上がってくる。アフリカ、アジア、南北アメリカ、オーストラリアなど、ほぼあらゆる民族が類似の創造神話を持ってるということは、その土地に着いた時点ですでに同じ基本形となる神話を持っていたと考えられる。後から広まったとしても、世界中でそれが同じように採用される可能性は低いだろう。ただ後から出来上がった神話やシンボルが部分的に広がることはあった。

この観点では宗教の発展の道筋は2つある。出アフリカの時点で共通シンボルがいくつか出来上がっており、それを伴って紀元前5万年頃にイランからオーストラリアへ向かう流れと、紀元前4万年以降にヨーロッパ、東アジア、南北アメリカへ向かう流れ。

 これで共通シンボルを分類すると、次のように共通シンボルAはアフリカ時点で出来上がっていて、世界各地に広がる。そして年代を経るごとに各地で新たなシンボルや神話が生まれ、混ざり合い発展していく。


紀元前7万年頃、出アフリカの時点

○共通シンボルA

2匹の蛇、虹蛇(ベナンなど)

・宇宙の創造神話(マサイ族など)

・宇宙卵(ドゴン族など)

・洪水神話(ムブティ族など)

・粘土から人間を作り出す物語(ムブティ族など)
天地創造神話(ケニアのアバルイヤ人など)

・アダムとイブ(西アフリカのアシャンティ人)

・相撲やレスリング(カメルーンではドゥアラ相撲)

・ドルメン(アルジェリア)

・あらゆるものに霊魂や神は宿るというアニミズム

・樹木信仰


紀元前5万年頃、オーストラリアのアボリジニへ

○共通シンボルA


紀元前4万年頃、日本方面へ

・宇宙の創造神話

・アニミズム

・樹木信仰

・女神像


紀元前2万年頃以降、ヨーロッパ、東アジア、南北アメリカへ

・様々なシンボル(紀元前2万年頃のヨーロッパの洞窟壁画では、渦模様、ジグザグ模様、蛇型の線、三日月型の半円、はしご、手のひら)

・宇宙の創造神話
・アニミズム

・樹木信仰
・女神像
・相撲やレスリング



紀元前1万年頃、トルコのギョベクリ・テペ
・様々なシンボル(
2匹の蛇、黄金比の渦模様、T字、H字、ハンドバック、鷲(わし)、サソリ、イノシシ、トカゲなど)


紀元前5000年頃以降、
エジプト、ヨーロッパ、東アジア、南北アメリカへ

○共通シンボルA群に加え
・様々なシンボル(黄金比の渦模様、T字、H字、ハンドバック、イノシシ、龍、虎、有翼円盤など)

・黄金比を使用した建築

・切込み接ぎの石積み
・ピラミッド

・神が赤子時代に何かに入れられて川に流された物語
・獅子像
・月とウサギの物語



紀元前7万年頃の出アフリカの時点で、宇宙創造神話やアニミズムが存在していたことなど、その時代すでに精神的に優れた人物がいたと言える。それはシャーマンなどの祈祷師、巫女(みこ)などが中心的な役割を果たしただろう。ここまで見てきたように、全ての宗教や信仰、シャーマニズムは出どころが同じで、出アフリカから広がったという結論。それが各地で混ざりあったりして、独自の名称や物語に発展していった。そしてすべての宗教の神は無である「意識」を意味しており、それは人間の意識のことでもある。

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