沖縄に近い台湾にも、2匹の蛇のシンボルが見られる。台湾南部に住むパイワン族は、台湾原住民の17.7%にあたる。
パイワン族は世襲貴族制で、貴族、準貴族、平民の三階級からなる。貴族の頭目家は支配権を持ち、そのシンボルは百歩蛇(ひゃっぽだ)という蛇。家紋として人体像、家屋の入り口、柱、軒に彫刻し、衣服に刺繍してきた。
このパイワン族の創世記は、太陽と百歩蛇(ひゃっぽだ)という蛇にまつわるもの。この物語は複数存在するが、下記はその一例。
「昔、太陽はツァカパウクヌ山の頂に赤・白の卵を一個ずつ生みおとし、百歩蛇のブーロンに、それを保護するよう命じた。そこで百歩蛇はこの卵の孵化(ふか)につとめ、その結果やがてこの二個の卵から男女二神が生まれた。この二神の後裔(こうえい)がパイワン族の貴族の祖先となった。平民の祖先はリーライと呼ばれる青蛇から孵化したもの。パイワン族の服飾や芸術彫刻品のなかに、多くの蛇模様が見られるのはまさにこの為である。」(高淵源著、台湾高山族、1977年2月刊より要約)
このパイワン族の祭祀用土器の浮き彫りに、渦巻き模様の2匹の百歩蛇(ひゃっぽだ)の浮き彫りが見られる。
次の画像左側の木彫板では頭に2匹の百歩蛇が見られ、両手を上げ手のひらを見せている。これも共通のシンボルポーズでタニトや女神像に見られた。右の木彫板では2匹の百歩蛇の上に祖先の人面が刻まれている。その百歩蛇の体には、ジグザグ模様で菱形が描かれている。
下の画像はタニト、両手を上げるポーズ、十字のシンボル。
またパイワン族の針磨きという木彫の渦巻き部分にもジグザグ模様が見られ、上部先端には十字も見られる。トグロの中心部には三角紋を頭につけた祖先神の顔の彫刻。
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