アボリジニと各国の虹蛇

アボリジニの木彫容器クーラモンは楕円形の皿で、果実や水などを運ぶのに使われる。一番右の画像はクーラモンのデザインの移り変わりをまとめたもので、下へ行くほど新しい時代になる。最初のクーラモンに1匹の蛇が見られる。


アボリジニには3つの蛇神(じゃしん)であるウングッド、エインガナ、ユルルングルの伝承があり、虹蛇とされる。話の内容はそれぞれ異なる。

「ウングッド」
根元神ウングッド、もしくはウングルは、海しかない世界で海底の泥が集まって生まれ、己しかいない寂しさを失くすために命を生みだそうと考える。 そこでまずブーメランで海を撹拌(かくはん)して泡立て、その泡で巨大な大地を作り上げ、そこに無数の卵を産んで生命を増やしていった。これがアボリジニ伝承における創世神話。またブーメランがシンボルでもある理由。

これと類似した話は、日本書紀と古事記に見られる。イザナギ、イザナミは天浮橋(あめのうきはし)に立ち、天沼矛(あめのぬぼこ)で渾沌(こんとん)とした大地をかき混ぜる。このとき、矛(ほこ)から滴り落ちたものが積もって最初の島のオノゴロ島となった。その後二人は結婚し、大八島(おおやしま)と神々を生んだ。イザナギ、イザナミも無のシンボル。

モンゴルの創成神話でも、類似したかき混ぜる話が見られる。はじめ水だけがあり、天から仏教の神ラマが鉄の棒を持ってやってきて、かき混ぜはじめた。すると風と火が起こり、その水の中心部が厚くなって地球が誕生した。

「エインガナ」
この世の最初は無限の砂漠であり、エインガナはこの風景を見飽きて世界を生命であふれさせようと思い付く。そこでエインガナは水中に潜ってあらゆるものを創造し、最後に長い陣痛(じんつう)の末に人間を産み落としたという。エインガナは全ての生命に関わる紐(ひも)を所有しており、エインガナが紐を手放した種は絶滅する運命となる。

「ユルルングル」
オーストラリア南部の伝承の虹蛇ユルルングル。「父なる蛇」と呼ばれる天候神で、その声は雷鳴であり、彼の住む泉は虹色に輝くという。長らく泉の底で眠りについていたが、自身の子孫に当たる人間の姉妹が泉に経血(けいけつ)を落とし、その臭いで目覚め、起きた勢いで洪水を引き起こした。そして姉妹とその子供たちを、勢い余って呑み込んでしまう。その後、蛇による集会が開かれ、ユルルングルは自分の子孫を呑み込んでしまったことを告白し、彼らを吐き出すことを約束する。そうしてユルルングルは姉妹と彼女の子供たちを吐き出すと、ユルルングルが所持する魔法の楽器ディジュリドゥが独りでに鳴り響き、アリが姉妹と子供たちに噛みついて蘇生させた。この伝承からアボリジニの一部の部族では、成人の儀式として嘔吐を経験することになっている。

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