一流と二流を分ける違い

運動にしろ勉強にしろ、自分や他者の能力の向上に取り組む上で役立つ視点がある。それは今までの反復時間の合計のこと。この合計時間が多い人ほど一流に近づく。

こういったことはトレーニングメニューを計画する時に役立つ。また成長を実感しなくなる瞬間や、能力の限界を感じ、自信を失う時にも役に立つ。


1990年代初頭に、一流と二流を分ける要素は何かについての研究が行われた。この研究の目的は、どうしてある特定のバイオリニストは他より素晴らしいのかを明らかにするためだった。

当時、優秀な音楽家を輩出していた西ベルリン音楽学校に研究者が赴き、次の3つのグループのバイオリニストを指名した。


1、最高グループ。同校で国際的なプロのソリストとして活躍しそうな最高のバイオリニストたち。

2、よりよいグループ。トップグループほどには優秀ではないが、大変上手なバイオリニストたち。

3、よいグループ。入学基準がより低い大学内の別の学部のバイオリニストたち。




この3番目のグループの生徒は卒業後、通常は一般の学校の音楽の先生となることが多かった。


この研究では、各グループの年齢は20代前半で、性別もできるだけ同じになるよう配慮された。そして被験者の個人的データを収集した。


そして分析の結果明らかになった事実は、次の通り。


「多くの基準で、3つのグループのバイオリニストはほとんどが似通っていた。約8歳でバイオリンを始め、15歳のときに音楽家になることを決意している。この研究が実施されるまでに、被験者たちはすでに10年間バイオリンを演奏していた。この3つのグループに、特に大きな違いを見つけることはできなかった。」


さらにこの3つのグループは、週に同じだけの時間を音楽関連の活動に使っていた。例えば個人レッスン、自分での練習、クラスでの授業。一週間の合計時間は約51時間だった。


この3つのグループは、どれもが朝早く起き、何時間もの時間をバイオリンに費やしていた。


そして、どの活動がバイオリン演奏の上達に重要か、被験者は明確にわかっていた。それは自分で練習することだった。


ここまでは3つのグループに違いを見出せなかった。


その後、音楽に関する12個の活動と、音楽とは無関係の10個の活動(家事や買い物や余暇など)の中で、何がバイオリンの上達に重要かを評価するよう求められると、誰もが一人で練習することを一番にあげていた。



一人で練習することの重要性は理解していたが、実際に一人で練習している時間は、3つのグループ間で劇的に異なっていた。



「最高」と「よりよい」グループは、1週間平均で24時間。しかし「よい」グループは週に9時間しか練習していなかった。



このバイオリニストたちが言うところでは、一人での訓練はもっとも重要な活動だが、もっともつらくおもしろくないものとしている。そのため、たくさん練習するには自分の生活を独自の方法で工夫する必要があった。



例えば、「最高」と「よりよい」の2つのグループの場合、朝の遅い時間帯か、午後の早い時間帯で、まだ活力のあるうちに自分一人で練習している。それに対して3番目の「よい」グループのバイオリニストたちは、午後の遅い時間に練習している。それは彼らがもっとも疲れていると思われる時間帯だった。




さらに上位2グループは第3番目のグループともう一つの点で異なっていた。


上位のグループは下位のグループより夜長く寝るだけではなく、多く昼寝をしていた。これはつまり、一人での練習は消耗が激しく、 体力回復には多くの休息を必要していたためであった。


3つのグループはみんな同じく無制限の時間を持っていた。しかしその辛い一人での練習を多くした者が、 優れたバイオリンの弾き手であった。



練習の効果は反復の累積による。この時、「最高」と「よりよい」グルー プのバイオリニストたちは、週に24時間練習していた。これは「よい」グループのバイオリニストに比べ、圧倒的に多い練習量だった。


ここでは上位2グループ間の練習時間に、意味のある違いを見つけることができなかった。しかし違いが現れたのは、18歳に達するまでの練習時間の合計だった。



18歳に達するまで最上位のグループは平均で7410時間練習していた。
2番目のグループは5301時間。
3番目のグループは3412時間の練習していた。


つまり合計の練習量が多い方が、より高い業績を上げられるということだった。



参考文献

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